2011年 01月 13日
歩いても歩いても |
出演: 阿部 寛 夏川結衣 樹木希林 原田芳雄
監督: 是枝裕和
(「キネマ旬報社」データベースより)
『誰も知らない』の是枝裕和監督が原作・脚本を手掛けるホームドラマ。
良多は妻と息子を連れて実家を訪れる。
時を同じくして姉の一家も帰省し、横山家には久しぶりに笑い声が響くが…。
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006 歩いても歩いても
一人でこの作品を観ようとしていた夜。
娘がお風呂から上がってきて、「なに観てるの?」と私に聞く。
「『歩いても歩いても』っていう映画だよ」と答えると
「まちのあかりが とてもきれいね・・・」と、娘。
「なんで知ってるの~?」と、私が驚くと、
「ずっと前にママ、教えてくれたじゃない」と娘。
そうだったかも。
ママが小さい頃、大好きだった歌だよって歌ってあげたかも。
そんな娘のウォークマンには、
マチャアキの「さらば恋人」とか
「真夜中のギター」なんて古い歌がたくさん詰まっています。。。
さて、そうしてこの作品。
思ったとおり、私の大好きな作品になりました。
いいです。 とても。
若くして亡くなった長男の命日に、実家にきょうだいの家族が集まる。
夏の終わりの二日間の風景。
それが実に見事に切り取られている。
決してドラマチックにではなく、静かに、穏やかに。
過剰な説明や演出は一切なく、まるでほんとうの家族の一日を写し取ったかのよう。
そして観る側は、まるで その家族の中に入り込んでしまったかのような気持ちになって
すごく すごく 分かる のだ。
分かりすぎるほど分かってしまうのだ。
こんな作品、初めてかもしれない。
だんだんに分かってゆく 深い深いもの。
この物語の主人公は二男役の阿部寛。
彼の憂鬱や気の重さや焦燥感や複雑な思いも見事に描かれているけれど、
なによりすごいのは、母親役の樹木希林。
すごい。。。
そしてそしてさらに、長女役のYOUの素晴らしいこと。
この二人のありようや やり取りが、ほんっとにほんとに親子すぎて
私はその子供になってそばで見ているかのような気持ちになってしまった。
それから
大好きだったのは料理のカット。
料理上手な母親がこさえるご飯や おかずや おつまみや お菓子。
それを調理する手際の美しさ。
人参の皮を包丁で こそげる音
じゃがいもを すりこぎで ほくほくにつぶす様
ゆでた枝豆を ざっざと湯切りして、塩をまぶす動き
みょうがを刻む包丁の音
海老の背ワタを取って とうもろこしの天ぷらをぱちぱちと揚げて
白玉粉で白玉をこねる
気持ちいいとはこのこと。
庭のサルスベリの桃色の花や
いとこと遊ぶ けんけんぱ や
自分の靴じゃなく、玄関に並ぶ大人のつっかけサンダルを履いて
庭や近所で遊ぶこと
ひっきりなしに料理やスイカやお菓子を勧められること
食べすぎちゃうこと
実家に親戚が集まる日の子供の頃の風景や
大人になってから実家に帰省した日の風景がめくるめくほどに思い出される。
分かりすぎるほどに。
印象的だったのは、二男の息子の心の変化。
この帰省で過ごした二日間の彼の心の劇的な変化。
それはとても心が暖かくなる。
穏やかなギターのアルペジオが
とてもこの作品にあっていて
まるで秋の日の陽だまりにいるような気持ちになる。
穏やかな小春日和の秋の日の。
by childrenmammy
| 2011-01-13 23:54
| 映画